【スタッフ教育・マネジメントにお困りのあなたへ】実録「やめない店はこうつくる!」ストーリー

ご訪問いただき、ありがとうございます。

「ねぎらい」(無条件の感謝と、存在の承認)で、「やめない風土と仕組みづくり」を推進する、ねぎらいカンパニーの兼重です。

 

今回から、【実録「やめない店は、こうつくる!」】の連載をスタートします。「やめない店」のつくり方を、ストーリーで綴っていきます。

*どのようにすれば、「人がやめない店」になるのか?

*まず、何から始めたらいいのか?

*それって、どのくらいの期間が必要なのか?などなど、、、

やめない店づくりに関心を持つ読者の皆様も、きっと知りたいことがたくさんありますよね。

 

ある企業様との、約3年に渡る『やめない店プロジェクト』を通じ、筆者が感じたことをストーリーにして、お届けして参ります。(文中の固有名詞は全て架空です。実話を元に、再構成しております。ほぼ……ノンフィクションです)


ということで、「兼重本」のファンの方、お待たせいたしました!(笑)

久々の”ショップ小説”、スタートします!

 

EPISODE1:“人が辞める店”には、理由がある

■最後の研修会■

「はい!では、新しく迎える新人スタッフさんへ、一言メッセージをお願いします。あ、では店長だけじゃなくて、お店のスタッフさん、全員でいきましょうか。はい、みなさん、こちらに集まってください~。カメラ位置確認しますー!」

 

今日は、最後の研修会。外部講師として、約3年間関わらせて頂いた、あるクライアント先さまでの、「集大成」ともいえる、研修会だ。

 

「最後の研修」に相応しい内容にしたかった。

そこで、その会社が運営する、5店舗の店長に「自店の接客で大切にしたいこと」を3つ、反対に「これだけは絶対してほしくない接客応対」3つを、それぞれ語ってもらい、その「接客シーン」を動画で撮影することにした。

その「接客動画」は、やがて、店長の想いやこだわりの接客サービスを伝えるための、貴重な「教材」になるだろう……、

そんな、「かたちに残る」なにかがしたかった。

 

「接客シーン」をカメラに収め、最後に私は、店長にこう呼びかけた。

「はい!では、新しく迎える新人スタッフさんへ、一言メッセージをお願いします。あ、では店長だけじゃなくて、お店のスタッフさん、全員でいきましょうか。はい、みなさん、こちらに集まってください~。カメラ位置確認しますー!」

 

この先、共に働くかもしれない新人スタッフさんへの、一言メッセージ。この動画が出来上がったら、新人研修としてこれを見てもらい、「うちで大切にしている接客について、お伝えしますね」と、店長や、先輩スタッフさんが語って聞かせる。

「接客マニュアル」では追いつかない、「サービスマインド」を継承していくには、こうやって語って聞かせることが一番重要なのだ。しかし、なかなかそれを苦手とする店長も、最近は多い。

だからこそ、そういうことができるお店になったら、どんなに素晴らしいだろう、と、ずっと思い描いてきた。

ようやく、やっと、それが、現実になる。

 

「お客様も、お店のスタッフも、みんなが楽しめるお店を目指しています。みんなで、お店を盛り上げましょうー!」

「スタッフ一丸となって、お客様に、アウトドアの楽しさを伝えています!一緒に楽しく仕事しましょう!」

「一人一人のお客様を大切に、そのお客様に合ったご提案をしています。〇〇店を、よろしくお願いいたしますー!一緒に頑張りましょう!」

 

店長たちの、少し照れながらも、堂々とメッセージを語ってくれている姿を、ひとり、感慨深く見守る。

 

「3年前は、こんなことができるなんて、夢にも思ってなかったな……」

 

3年前。初めて、そのクライアントさんお伺いした時、感じたのは、それまで経験したことのない「閉塞感」だった。

息が詰まるほどの、「閉塞感」、そして、その空気感に堪え切れず、次々と人が辞めていた。

 

■涙の店長面談■

「これだけ、次々と人が辞めていくなんて、、、正直、非常に困ってまして。やっと店長になった!と思った途端、店長が真っ先に辞めてしまう……。なんとかしてもらえませんか?」

 

本部のマネージャーとの初めての打ち合わせの際、その女性マネージャーは、心底困り果てた様子で、こう言った。

「原因は、なんだと思われますか?」

私が尋ねると、

「それが、わかんないんですよね~~、だから困ってるんです」

と、彼女は首を傾げた。

 

直接、店長のお話が聴きたいので、「店長面談」をさせてもらえませんか?

と、申し出ると、すぐにそれは、実現した。

 

面談当日。

正直……こんなに、泣かれた面談は、初めてだった。

田中店長は、某雑貨ショップの店長。先月店長になったばかりだという。

 

「今、一番、何が困っていますか?」

そう尋ねた途端、ダムが決壊するように、涙が溢れだす。

 

「………困ってること、、、だらけで、、、。何から話していいか……」

言葉を発するのが、やっと……な状態。

女性マネージャーに頼んで、ティッシュの箱を持ってきてもらう。

 

どうして、ただ働くだけのことが、こんなに苦しいのだろう。

何が、こんなにも、彼女を苦しめているのだろう。

 

彼女の「今、困っていること」を丁寧に、聴きだしていく。

何度も、言葉に詰まり、それでも、彼女が口を開くのを、辛抱強く待つ。

 

最後に、こんなしつもんをしてみた。

 

「田中さん、“店長の役割”って、なんだと思いますか?あ、これは、たぶん、100人いたら、100通りの答えが返ってくるしつもんで、答えは、全て正解です。田中さんが考える、“店長の役割”を聴かせてほしくて」

 

意外と盲点になっているのだが、

「“店長”という仕事のことを、あまりに知らないまま、誰もが店長になる」

これが、今のお店の実態だ。

 

「店長の仕事なんてやってみないとわからないから。徐々に覚えていけばいいよ」

「最初は、みんな手探り状態だけど、そのうち、慣れていくから」

こんな状態で、「店長」になり、「お店」を任されてしまう。

 

「お店」を任されるということは、「数字」へのプレッシャーと、スタッフとのコミュニケーションの悩みから逃げられなくなる、ということだ。

 

不安にならないほうがおかしい。

 

わずか、1か月前に店長に就任したばかりの田中店長。さぞかし、心細い想いをしてきたに違いない。

やがて、絞り出すような声で、こう言う。

 

「店長の役割は……、えーと、、、売場をつくったり、、、あとは、売上を上げること、、、です」

 

その言葉で、確信する。

 

――なんにも教えてもらってないじゃないか。

任せるだけ任せて、あとはほったらかしじゃないか。

これで、どうやって、店長の仕事をやれっていうんだろう――

 

「ありがとうございます。はい、それも、大切な店長の役割ですね。では、これから始まる研修会では、私の考える「店長の役割」をお伝えしていこうと思っています。できたら、一緒に考えていきたいな、って思うんです、今の田中さんのお店に何が必要で、そのために、田中さんが店長として、何をすべきか?で、私にどんな応援ができるか?ってことを。ぜひ、一緒に頑張りましょう!」

 

そう力強く言ったものの、田中店長の顔はなかなか晴れないまま、面談時間が終了してしまった。

店長の後ろ姿を見送った後、女性マネージャーが、ポツリとこんなことを言った。

 

「まだまだ、甘いですね。もっと苦労してもらわないと」

 

正直、何を言ってるかわからなかった。

 

「……どういうことですか?」

 

「歴代の店長、みんなそうなんですが、最初は苦労するんですよ。でも、苦労して苦労して、自分で答えを見つけて、みんな崖の下から這い上がってくるんです。そういう子じゃないと、やっぱり、店長は務まらないんで。だから、田中さんも、まだまだ、だなって」

 

クライアントさんを、怒鳴ったのは、生まれて初めてだった。

 

「何言ってるんですか?!そうやって、みんなを崖に突き落として、自分で這い上がって来い、這い上がってこれない人は、店長失格ですね、はい、サヨナラって。

そんなの、辞めるに決まってるじゃないですか!!こんなこと、いつまで繰り返すんですか?!」

 

女性マネージャーの、呆然とした表情が、今でも忘れられない。

ーEPISODE2に続くー

EPISODE1のポイント

「やめない店づくり」を進める上で、何から始めたらいいですか?

と聞かれたら、迷うことなく、最初にすべきは

「店長の話を聴くこと」だと答えます。

 

できるだけ、「売場」を離れたところで、店長の話を聴く場をつくります。

要するに「面談」です。

 

「面談だったらやってますよ、年に二回は。人事考課がありますから、ちゃんと時間つくってます」

この面談じゃないです。

 

もっと、日常的に、店長の変化に気づいたら、いや、気づかなくても、できれば、週に一度、少なくとも、月に一度は、「店長が自分の思いを伝えられる」場をつくってほしいというのが、理想です。

 

この場合、店長の話を聴くのは、上司である、マネージャー、いない場合は、先輩の店長などです。

 

ただ、お悩みや愚痴を聞くためではありません。

 

「その店長のために、自分にどんな応援ができるか?を確認するため」です。

 

店長が育っていない。

仕事を覚えられない。

店長としての職務を全うできない。

 

のは、誰の責任でしょうか?

 

そうです、店長の上司である、マネージャーの責任です。ならば、店長がステップアップしていくための、最大限の支援やサポートを、マネージャーはしていく責任があります。

 

このクライアントさんは、残念ながら、

「店長が育たないのは、店長自身の力不足」

そんな風土が、いつの間にか出来上がっていました。

 

崖を這い上がってこない、あなたがまだまだ弱いのよ、と。

 

それはマネージャーが、自分の職務を放棄している、のと同じです。

 

「そんなことで困ってたんだ!ごめんね!すぐに、わかりやすい資料送るね!」

「一人で抱え込んでたね、辛かったね、ごめんなさい!じゃあ、今度は一緒に売場変更しようね!」

 

店長が困っていることをきけたら、それをサポートできることを見つけ、具体的に動く、

これが、マネージャーの役割です。

 

……しかし。

「なので、マネージャー、あとはよろしくお願いします!」

となれば、誰も苦労しないのですが、そう簡単には参りません(笑)。

 

「やめない店づくり」プロジェクトは、実はまだ始まってもいなかったのです。