「ねぎらい」で、なぜ、人は辞めなくなるのか?

■ある地区リーダーとの出会い■

自分が初めて「ねぎらい」という言葉に出会ったのは、今から、十数年前。

あるアパレル企業の「全国縦断不振店対策OJT」という、とんでもなくハードなプロジェクトを行っていた時のこと。

全国の各エリア内での、「重点店舗」でありながら且つ、「売上不振店舗」を選抜し、各エリア長に帯同して、各店を臨店指導する、というものでした。

その時、あるエリア長から、初対面でこんなことを言われました。

「ちょっとお店を見ただけで、何がわかるんですかねぇ?こういう状態になるまでには、色々な経緯があって、さんざん頑張ってきて、“今”があるんです。誰も、手を抜いてきたわけじゃありません」

どうやら、私のことを、「店舗の不振要因を社長に告げ口する、とっても嫌なヤツ」と思っていらっしゃったようで(笑)、明らかに敵意むき出しでした。それくらい、追い込まれていたのでしょう。もっとも逆の立場なら、私も同じように思ったかもしれません、「外部のあなたに、何がわかるんですか?」と。

しかし、私も、「客観的に、売上不振の要因を発見し、改善案を出してほしい」との役割を与えられている以上、「どうすれば、もっとお店がよくなるか?」「どこに無駄があって、どこに伸び代があるか?」という視点で店舗指導に入らせて頂きました。

 

結論。

 

エリア長のおっしゃる通り、「手を抜いているお店」はありませんでした。どの店も、休憩もままならないほど、忙しく働き、店長は仕事が終わらず、家に持ち帰ってまで様々な業務をこなしていました。

にもかかわらず……。

「目標達成」できないお店は、どうしても、会社からは認めてもらえず、非常に肩身の狭い想いをされていました。会議の場では、部長から「どうして売れないんだ!」「誰が悪いんだ!」と「要因探し」という名の「犯人捜し」が始まり、どの店長も、みんな下を向いていました。

結果、たくさんの店長や、スタッフが辞めていました。

退職理由をまとめたファイルには、なかなかに辛辣な言葉が並んでいました。

「結局、会社は売上しか見てないですよね」

「予算達成できない私たちのお店は、”会社には必要ない“と言われているようでした」

「人が足りない中、休みなく働かされて、でも、予算が達成できないと減俸。やってられません」

胸が痛すぎて、涙が止まらなかったことを覚えています……。

――こんなに頑張っている人たちがいるのに、どうして報われないのだろう――

その頃、私は、貪るように、ビジネス書を読み漁っていました。当時は、「成果主義」全盛期で、「いかに目標管理が大切か?」「成果を上げるためのマネジメントとは?」など、どうすれば、皆さんの頑張りが評価につながるのか?の答えを探していました。

しかし、明確な回答は見つけられませんでした。

■人生を変えた一冊。一文■

そして、一冊の本と出会います。

「仕事ごころにスイッチを!」 著:小阪裕司氏

(育成に悩んでいるリーダーの皆様には、ぜひ読んで頂きたい一冊です!)

 

その中の一文に、釘付けになります。

――褒めるは条件付き。ねぎらうは無条件――

「褒める」、つまり、認められたり、称賛されたり、まぁ、わかりやすく言うと、表彰されたり、報奨金が出たり、、、は、あくまで「条件付き」。条件をクリアした人たちだけが、享受できるもの。

それは確かにそうでしょう。

しかし、じゃあ、「条件をクリアできなかった人たち」は、認められもせず、見向きもされず、「どうせ、私達なんか、必要とされていないですよね?」と思わせてしまうほどの、存在なのでしょうか?

否。

断じて、否!です。

■「褒められなくていい、ただ、認めてほしい」■

誰が、毎朝決まった時間にお店をオープンさせてくれているのでしょう。

誰が、欠員の代わりに出勤してくれているのでしょう。

誰が、キレイにお店を掃除し、買いやすい売場をつくってくれているのでしょう。

誰が、難しいお客様にも、笑顔で対応してくれているのでしょう。

誰が、「もうこれ以上スタッフがやめないように」と、自分の時間を費やしてスタッフのケアをしてくれているのでしょう……。

 

全員です。

お店に携わる、全ての皆さんです。

「数字」には表れないかもしれません、でも、「店が決まった時間にオープンし、いつもと変わらず、お客様を笑顔でお迎えすること」自体が、今は、決して「当たり前」のことではないのです。

それは、「褒められること」ではないかもしれません、でも、もっともっと「ねぎらわれる」ことだと思うのです。

 

――褒めるは条件付き。ねぎらうは無条件――。

 

この一文で、私は霧が晴れたように理解しました。

 

――お店に足りないのは、「ねぎらい」だったんだ――

 

「今日も、朝早くから、出勤ありがとうございます」

「シフト、調整してくれて、本当にありがとうございました、助かりました!」

「いつも、キレイに掃除してくれてありがとうございます。今日も気持ちよく働けて嬉しい!」

 

こうした「ねぎらい」の言葉や、気持ち……さえあれば、人はやめません……などと言うつもりはありません。それほど、単純でないことも理解しています。

それでも、「ねぎらい」さえないお店が、「人がやめない店」になることは、もはや不可能である、ということもまた真実なのです。

■「ねぎらいは、伝播する」■

冒頭の「全国縦断不振店対策OJT」。私は、プロジェクトの途中で、社長にお願いし、地区リーダーを対象にした、「ねぎらい研修」を実施させていただきました。

地区リーダーの上司である、地区部長や、ブランド長から、地区リーダー宛てに、「ねぎらいレター」を贈って頂きました。もちろん、サプライズで。

初対面で私に「ちょっとお店を見ただけで、何がわかるんですかね?」と詰め寄ってきたリーダーの元にも、「ねぎらいレター」は届きました。

 

彼女は、声が詰まって、最後まで読めませんでした……。

 

その後。

地区リーダーが主体となって、各店長を対象とした「ねぎらい研修」を実施していただきました。「ねぎらわれると、ねぎらいたくなる」、これは、ねぎらわれた人たちの共通する想いのようです。自分がかけてもらって嬉しかった言葉を、今度は次の人たちに届けたくなる。そうして、全店長に「ねぎらいレター」が贈られ、その後、離職率は劇的に改善されていくのです。

未だに、当時のメンバーに出会うと、こういわれます。

「一生、忘れられない経験でした」

「あの手紙があったからこそ、続けられました」と。

 

売上回復には、もう少し時間を要しましたが、「頑張ってることを、ちゃんと見ててくれる人がいる」ということが、彼ら、彼女らにどれほどの勇気を与えてくれたか。

私は、この出来事を通じ、「“ねぎらい”は“やめない店づくり”にはなくてはならないもの」と確信しています。

 

――人知れず、コツコツ頑張っている人が、報われる社会にしたい――

この願いを込め、「ねぎらいカンパニー」を立ち上げました。

人知れずコツコツ頑張っている人、

それは、あなた自身であり、あなたの周りのスタッフであり、そして忘れてはならない、あなたの上司、かもしれません。

 

次回は、実は、あなた以上にねぎらわれていない存在、「上司ねぎらい」についてお伝えしましょう。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回も、どうかお楽しみに!

 

■「ねぎらい研修」って何?という方はコチラから。
http://kaneshigehinako.com/negirai-seminar/

 

■【経営者・教育担当者向けセミナー】人材を失わない店にするための3ステップ

http://qq1q.biz/PY7P

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