【実録「やめない店は、こうつくる!」EPISODE3】

「ねぎらい」(無条件の感謝と、存在の承認)で、「やめない風土と仕組みづくり」を推進する、ねぎらいカンパニーの兼重です。

本日もご訪問いただき、ありがとうございます。

 

【実録「やめない店は、こうつくる!」】3話目をお届けします。

 

第一回目の内容は、こちらから。

新連載スタート!【実録「やめない店は、こうつくる!」EPISODE1】

第二回目の内容は、こちらから

【実録「やめない店は、こうつくる!」EPISODE2】

【あらすじ】

ある企業様との約3年に渡る「やめない店プロジェクト」。

「店長とは?」「本部とは?」「マネージャーとは?」それぞれの役割が不明確なまま、「まずは、やってみよう!」と勢いだけで、店長職を命じられた田中店長。

が、しかし、本来、店長を育成する立場であるマネージャーも、「店長教育とは?」を知らないまま、責任だけ店長が負わされる状況が、いつの間にか常態化していた。

 

【実録「やめない店は、こうつくる!」EPISODE3】

【カリスマ店長の時代は終わった】

 

「実は私、、、店長経験がないんです。だから、店長という仕事がどんなものかとか、どれくらい大変なのか、、、正直、わからないんです」

 

マネージャーのその言葉に、今度は、私が、呆然とする番だった。

 

なぜ、誰も店長のサポートをしないのか?

なぜ誰も「店長とは何か?」を教えてあげないのか?

答えは、哀しいほど明白だった。

 

野球をやったことのない人間に、野球選手を育てることができないように。

ピアノを弾いたことがない人間が、ピアニストを育てることができないように。

店長を経験したことがない人間に、「店長教育」は、やっぱりできないのだ。

 

「……そうだったんですね……。すみません、私もよく状況を知りもせず……」

 

私は、思わず、マネージャーを怒鳴ってしまったことを恥じた。

どんなことにも、必ず「原因」と「結果」がある。マネージャーが、店長に対し抱く感情にも、必ず「理由」があるのだ。

そう、「店長はこうあるべきもの」と言い聞かされてきた女性マネージャーにとってみれば、田中店長が、いかにも頼りなく映るように。

 

一呼吸置き、

「これまで、どうやってお店を運営されてきたのか、お伺いしてもいいですか?」

そう尋ねると、マネージャーは少しずつ語り始めてくれた。

 

――もともと、、、ものすごいカリスマ店長たちがいたんですよね。我々本部も、その店長たちに頼り切っていた部分もあって。

でも、正直、彼ら彼女らが、どんなふうにお店を運営して、どうやってお店をつくって、売上をつくってきたか、、、本部もよくわかっていなかったんです、ブラックボックスになってたんですよね。

時代が変わって、彼ら彼女らのやり方ではうまくいかなくなって。

そうですね、、、本部が危機感を感じるようになったきっかけは、そのやり方に、スタッフがついていけなくなって、退職者がどんどん増えて、今思えば、当時の店長もどうしていいかわからなかったでしょうね……。

でもそれ以上に、本部はどうすることもできなかった。店長たちに「これ以上スタッフが辞めないように、なんとかしてくださいね」って言うだけ。店長も辛かったでしょうね。

そして、とうとう、店長たちが辞めると言い出した。そこからは早かったですよ。店長が変わる度に売上も落ちて、でも、誰も「やり方」がわからないから、例のように「とりあえずやってみて」ってやらせて、いつまで経っても店長に育たないし、結果もついてこない。そりゃ、店長もしんどいですよね――

 

「店長職」という名の「ブラックボックス」。

これは、どの会社でもよく聞く話だ。

よく売る店長というのは、意外とどこの会社にもいるのだが、しかし、「どうやって売っているか?」は、まさに「ブラックボックス」になっていることが多い。本部も「あの店長に任せておけば大丈夫だから」と、その「運営方法」や「売上をつくる仕組み」について、なかなか引き出すことをしないからだ。

 

しかし。

かつて売上をつくってきた、「カリスマ店長」は、もういない。1から、「売上をつくれる店長」を育てていかなくてはいけない。

 

【本部改革のために大切な、2つのこと】

 

そのための第一歩として。

私は、その会社に圧倒的に不足している、2つのあることを、どうしてもすぐに実行して頂きたく、女性マネージャーにこう切り出した。

 

「これから、店長研修を行うにあたり、どうしてもお願いしたいことが2つあります。

ひとつは……。田中店長があそこまで苦しんで、泣きたいのを必死に堪えて、売場を守ってきてくれたことに対して、その労をねぎらいたいんです。田中店長だけじゃないですね、ほかの4人の店長も、本当に、これまで頑張ってこられたと思うんです……。

「売上」という結果についてだけ言えば、もちろん、経営面からみれば、「まだまだ」ということになってしまうと思うんですが、少なくとも「売上を取ろうとして、必死に頑張ってきた」その姿勢だけは、ちゃんと認めて、ねぎらってあげてほしいのです。いかがでしょうか?」

 

何度も大きく頷きながら、女性マネージャーは、聴いていた。

 

「はい、、、。本当にそうですよね。どうしても、目に見える結果だけを評価しがちで、“あの店長は、売れてるから頑張ってる”“売れてないから、あの店長はまだまだだ”って、そんな風に関わってきてしまって。いや、私が、なんにもわかってないのがいけないんです、本当に申し訳ないと思います」

 

それは違いますよ、と私は心の中で思った。

あなただって、誰よりも、苦しかったはずだから。

 

「いえいえ。マネージャーもお辛かったはずです。だから、マネージャーのことは、私にねぎらわせてください!(笑)ただ、今は、まず、店長たちの心をつなぎ留めたいです。ちゃんと本部は見てるよ、頑張ってきてくれたこと、ちゃんと知ってますよ、って伝えてほしいんです」

 

「わかりました!で、、、どうすればいいんですか?」

 

「マネージャーさんから、一人一人の店長さん宛てに“ねぎらいレター”を書いてあげてほしいのです。まさに、これまでの労をねぎらう手紙、です。

あの時は、大変でしたね、ご苦労かけました、でも、辛抱強く乗り切ってくださり、ありがとうございます、、、あなたのお陰です、って。どうか、素直なお気持ちを綴ってほしいんです、、、」

 

女性マネージャーは、最初は、「えー、手紙ですか?!」と声を上げ、少し、戸惑っているようだったが、「店長たちの頑張りを、一番身近で見てきたのは、マネージャーじゃないですか!」と言うと、気持ちが固まったようだった。

 

「わかりました。ちょっと書いてみます、、、。そうですね、上手に書こうとしなくていいですよね、素直に感謝を伝える気持ちで」

 

「よろしくお願いします!で、あともう一つ、お願い事があるんです」

 

女性マネージャーの、『え…、今度は何をやらされるんだろう……』という心の声が、その表情から見て取れた。

 

つづく

 

【今日のポイント】

 

皆さんの会社にも、「あの店長スゴイよね」「あの人が異動する部署は、必ず業績が上がるんだよね」と言われるような、いわゆる「カリスマ」的なリーダーはいらっしゃいますか?

大抵、どこの会社にも、一人や二人は存在しているのではないでしょうか?

しかし、本文でも述べたように、なかなか、その「中身」と言いますか、「じゃあ、どうやって売上をつくってるの?」という「運営の方法」について、しっかりと社内で共有したり、横展開できている企業様は驚くほど少ないように思います。

 

「あの店長は特別だから」

「あの人だから、できるんだよね」

と、どうしても「属人的」な運営方法として捉えられてしまい、そこに眠る、財産の価値に気づけません。

本部の役割のひとつは、そうした、「好調事例」を、

「どうすれば、このやり方をほかのお店にも伝えられるかな」

「どうすれば、ほかの部署の人たちも、“やってみたい!”と感じてもらえるかな?」

を考え、発信していくことです。

 

例えば、定例の会議があった場合、「好調店(部署)」に、「好調要因」の発表をお願いする。これなら、比較的簡単にできますし、実際多くの企業でもやっていることでしょう。

しかし、大切なのは、そこからです。

 

「今の事例での、学びや、気づきはなんですか?」

「今の事例を、自店で活かすとしたら、どんなことができそうですか?」

 

この、問いかけをしない限り、発表を聴いている、その他大勢の店長は、

 

「あ~あ、あのお店はいいな~~。あれだけ、お客さんがいれば、そりゃ、売れるでしょ」

「売れてる部署の話を聞いたって、うちには関係ないし」

 

で、終わってしまいます。

「自分事」として、耳を傾ける、「マインドセット」がまず大切なのです。

そのための「問いかけ」が必要なのです。

 

そうすることで、どの企業にも眠っている「お宝」のような、「店長力」や「運営方法」「仕組み」や、「ノウハウ」を顕在化し、内省化していくことも可能です。

 

「売れているお店の、売れている要因を聴く」大切さは、それだけではありません。

 

努力をせずに、売れているお店など、今の時代、どこにもありません。

たとえ、環境的に恵まれていると、傍からは見えたとしても、そこには知られざるご苦労や、ご努力が必ずあります。

 

それを、「ねぎらう」絶好の機会です。

「売上」を褒めるのではありません、「売上」に結びつけた「陰の努力」をねぎらうのです。

 

■ねぎらいをコミュニケーションのベースにしよう■

 

この時、私は、女性マネージャーを通じて、「本部から、店長に向けて」の「ねぎらいレター」を依頼しました。

その会社に最も足りなかったもの、その一つは、

 

「全従業員にとっての、自分が、この会社に必要とされている実感

 

でした。

 

店長としての仕事もわからない、結果も出せない田中店長は、

自分はこの会社から、全く必要とされていない、と思っていました。

 

この後の物語で登場する、また別の店長は

「売れている時は必要とされるけど、業績が落ちると途端に掌を返したよう。

結局、会社は、売上しか見てないんだ」

と、思い込んでいました。

 

そして、「会社の期待に応えられない、自分なんかがいても仕方がない……」と、

女性マネージャーも、そんな哀しい囚われに陥っていました。

 

そんな囚われを、一瞬にして解き放つのが、「ねぎらい」の言葉なのです。

 

「ねぎらい」は、「存在の承認」でもあります。

 

あなたが、必要です。

あなたが、いてくれたからこそ、今のお店があるんです。

あなたが、いてくれないと困るんです……。

 

そう言われた時、人は初めて気づくのです、

 

ああ、私は、必要とされたかったのだ、と。

そして、自分を必要としてくれる人の元で、働きたいのだ、と。

 

人が辞めないお店、には、必ず「ねぎらい」があります。

誰もが「自分は、この店に必要とされている」と実感でき、自信と誇りを持てるからです。

 

 

さて、ここで、しつもんです。

 

――あなたは、職場から必要とされている実感がありますか?――

 

もしあれば、それは、とても幸運なことであり、幸せな職場なのだと思います。

 

では、このしつもんはどうでしょう?

 

――あなたは、誰かを必要としていますか?それを言葉で伝えていますか?――

 

あなた自身が、誰も必要としない、自分は一人でできるから、と頑なである以上、恐らく、誰もあなたを必要とはしないでしょう。

 

自分は、誰かから必要とされたい、でも、自分は誰も必要としない……、これでは、うまくエネルギーが循環していかないのです。

 

「あなたが必要です」

 

このたった一つの言葉も、相手にとっては「ねぎらわれる」瞬間です。

 

まずは、自分から、その言葉を贈れる一人であってほしいと願います、特に、人の上に立つお立場であるほど。

 

きっとその言葉を待っている人が、あなたの周りに、いるはずです。

 

次回は、

「本部改革のために大切な、2つのこと」の2つ目をご紹介します。

どうぞ、お楽しみに!