スタッフを信用できなかった店長と、信じてくれた上司

こんにちは。長部愛です。

レディスアパレル会社での10年以上のマネージャー経験をもとに、女性スタッフとの関わり方についてのコラムを書いています。


今回のお話は、前回のコラムとの関連もありますので、あわせてご覧くださいね。

前記事:それでも、わたしが会社をやめなかった3つの理由

 

スタッフを信じていない店長

入社5年目のA店長は、とある新規オープン店を任されました。

 

店長としては1年が経ったばかりでも、

彼女は入社してからずっと順調で、挫折感をほとんど味わったことがない自信家。

新規オープン店は、オープン景気も落ち着いてきていて、もう少し売り上げを伸ばしたいところでした。

 

A店長がいる日は日割予算が取れても、休みの日は予算を落とす。そんな状態が続いていました。

「わたしがいないと、売り上げが取れないんだから!」

「わたしがいない時は、どうせみんなお喋りしてダラけてるんだろうな」

事実、A店長が休憩から帰ってくると、それまで店頭で話していたスタッフたちが何事もなかったように散っていくという光景を、何度も見ていたんです。

「サブ店長はわたしの思いをどれだけ熱く語ってもいつもポケーッとしてるし、誰も真剣にお店のことを考えてないんだから!」

彼女はいつもこう思ってました。

 

スタッフのことをまったく信用していなかったんです。

 

そんな時、A店長は上司の”Sマネージャー”に休憩室に呼び出されました。

いつも飲みに連れて行ってくれて、話を聞いてくれる大好きな上司でした。

SマネージャーA店長、最近どう?」

A店長「みんながもっと真剣にお店のことを考えてほしいです。わたしがいないと売り上げが取れません」

 

Sマネージャーは神妙な面持ちで、A店長をじっと見つめてこう言いました。

 

Sマネージャー「そっか。あのね、今のあなたには誰も相談しようと思えないかもね」

A店長「え?」

 

どういうことでしょう?

褒められることはあっても、こんな風に指摘されるようなことがなかったのでA店長は驚きました。

 

Sマネージャー「あのね、、、」

と、言いにくそうにSマネージャーがそのあと告げたことは2つでした。

 

1)取引先のフロアマネージャーから「A店長はいつ話しかけても素っ気なくて、コミュニケーションが取りにくい」と言われたこと。

2)サブ店長以下のスタッフがA店長に対して萎縮して何も言えない状態だということ。

 

A店長はこれを聞いて、ただ呆然としました。一生懸命やってるのに、そんな風に思われてたなんて。

わたしが一番頑張ってるのに何がいけないの!

フロアマネージャーは他の店長たちと、世間話してるだけでろくなこと喋ってないじゃないか!

スタッフだっていつも意見を聞いてるのに、何も言わないのはあの子達の方じゃないか!

と怒りが湧いてきます。

 

でも、何も言えませんでした。

 

Sマネージャーは、事実を淡々と伝えたあとにこう続けました。

 

Sマネージャー:「A店長、自分から心を開かなきゃ、誰も開いてくれないのよ」

 

A店長は、その言葉にハッとしました。

休憩室で、他のお店の人たちもいるのに大量の涙が流れてきました。

 

フロアマネージャーが他の店長たちと仲良く喋ってる姿を見て、いつも羨ましかったこと。

スタッフの子たちと自分の間に分厚い壁がある気がして、いつも寂しかったこと。

そのことを否定するために強がって、誰かを責めてきたのに、もう我慢できなくなっていました。

A店長は、入社以来、初めて仕事で涙を流しました。

 

Sマネージャーは、入社以来ずっと面倒を見てきた彼女の初めての涙に驚きながらも、こう続けました。

 

Sマネージャー:「A店長、フロアマネージャーに可愛がってもらうことも店長としての役目だよ。そしたらスタッフたちも可愛がってもらえて、仕事がしやすくなるでしょ?!それと、スタッフたちが歩み寄るのを待つのではなく、A店長からスタッフに心を開かなきゃダメ。心を開いてくれない人に、相談したいと思えないでしょ?!」

 

こんな風にクレームをつけられるような仕事しかできなかったなんて恥ずかしい、A店長は聞きながらそんな風に感じてました。

Sマネージャーに育ててもらったのに申し訳ない。

もう辞めた方がいいんじゃないか、とも。

 

Sマネージャーは笑顔で続けました。

 

Sマネージャー:「A店長、こんなことであなたを信じる気持ちは何も変わらないよ」

 

 たった一言を変えるだけで

A店長はさっそく次の日の朝から行動を変えました。

フロアマネージャーに、引きつりながら笑顔で話しかけてみたのです。

 

「今日のマネージャーの靴、素敵ですね!」

すると

「あら!気づいてくれたの、嬉しい!」

と会話が盛り上がりました。

 

『フロアマネージャーはもっと怖い人だと思ってたのに、こんな風に笑って話してくれるんだな。驚いた!なーんだ、こんなことで良かったのか。よし、スタッフの子たちにもなんでもないことを話しかけてみよう!』

 

A店長が『もっとまわりの人を信じよう。自分からもっと心を開いて関わろう』と思えた出来事でした。

 


このA店長というのは、わたし(長部)です。

初めて仕事で涙を流し、悩みや葛藤を上司に吐露した出来事です。

あまりに衝撃的で、10数年前なのにその光景が目に焼き付いています。

 

それまでは大抵のことはうまくこなしてきてました。

一人で全て解決してきてました。

だから、自分を理解してくれない人、共感してくれない人がいたら、その人が悪いと本気で思っていたんです。

 

そこへきて、このような人間関係の目に見えるトラブル。

初めての挫折でした。

不甲斐なくて、ダサくて、消えてしまいたかった。

(完璧主義だったので)

 

そこへ、一番信頼している上司からの一言。

【あなたを信頼しているよ】

【どんなことがあっても変わらない】

全否定されたように感じる出来事でも、切り替えて「乗り越えたい!」と思えたのはこの一言のおかげでした。

 

その後、同じように悩む店長達にわたしはずっと言い続けました。

【どんなことがあってもわたしはあなたを信頼しているよ】

 

これが、わたしなりの上司への恩返しでした。

こうして、たった一言に救われることがあります。

自信をなくす出来事があった人にこそ、ぜひ伝えてあげてください。