【実録「やめない店は、こうつくる!」EPISODE5】

「ねぎらい」(無条件の感謝と、存在の承認)で、「やめない風土と仕組みづくり」を推進する、ねぎらいカンパニーの兼重です。

 

本日もご訪問いただき、ありがとうございます。

 

【実録「やめない店は、こうつくる!」】、5話目をお届けします。

【あらすじ】

ある企業様との約3年に渡る「やめない店プロジェクト」。

「ねぎらい」のない風土に、店長や、スタッフが次々と辞めていた。

解決の第一歩としての、店長研修会を、いよいよ実施することになった。

 

【実録「やめない店は、こうつくる!」EPISODE 5】

【埋まらない溝】

 

第一回目の「店長研修会」がやってきた。

これから、年5回のスケジュールで、研修をスタートする。

第一回目の今日は、「現状の課題」をまずは、一旦テーブルに上げることと、この1年をかけて、その課題をどう解決するか?目標を設定すること。

そして、これまでの労をねぎらい、チームとして「大切なこと」を共有することだ。

 

「課題を引き出す」ために必要なこと、それは「しつもん」である。

「しつもん」にはルールがある。

 

  • 答えは全て正解
  • 答えは出なくても正解
  • 周りの人の答えは「いいね」で受け止める
  • その人が必要としている答えは、その人の中にある

 

これは、「ここでは何を言っても大丈夫」という「安心安全な場」をつくるため。

質問家マツダミヒロ氏から学んだ、「質問の極意」である。

 

通常の研修では、このルールによって「安心安全な場」が守られ、だんだん場が温まり、自然と、一人一人の想いを引き出すことができる。

しかし、この日の研修は、様子が違った。

終始、店長たちの口が重く、誰かが発言する度に、ほかの店長が互いに目を合わせ、目で嗤うような、妙な空気が流れていた。

 

そもそも、店長の誰も、研修会など望んでいなかったのだと、今になってみれば思う。

本部と信頼関係ができていない以上に、外部講師である私とも信頼関係などあるはずもなかった。

 

場の流れがあやふやなまま、「ねぎらいワーク」の時間になった。

 

「今日のお話を伺って、皆さんが、これまでどれほどご苦労をされて、お店を守ってこられたから、改めてうかがい知ることができました。

そんな、皆さんの頑張りを一番間近で見てこられたのは、マネージャーさんですよね。

実は、マネージャーさんから、今日は、皆さんに、これまでの労をねぎらいお手紙を書いてきて頂きました。

今から、そのお手紙を一人ずつ、読んで頂きたいと思います」

 

場がざわつく。初めて、店長たちの目に、光が宿る。

 

一人ずつ、前に出て、自分に贈られた「ねぎらいレター」を声に出して読んで頂く。

しかし、いつもなら、涙あふれる感動と感謝の場になるその「ねぎらいワーク」も、その日は思い描いたような結果にはならなかった。

 

――〇〇店長へ

 

いつもありがとうございます。

〇〇店長とは、〇〇店長がアルバイトスタッフとして勤務されていた頃からの、付き合いですね。

最初は不安そうだったあなたも、だんだんしっかりしてきて、今ではすっかり立派な店長です。

よくやってくれていると思います。

でも、まだまだなところもあります。

新人スタッフも増えて、まだ人も安定していませんね。

これからは、私も精一杯、サポートします。

一緒に頑張りましょう――

 

手紙を読む店長の声は、ひどく冷静だった。

それはそうだろう、これは、「ねぎらいレター」ではなく、「期待」という名の「ダメだしレター」だったからだ。

 

今更ながら、事前に手紙の内容を確認しなかったことを、激しく後悔した。

ほかの手紙も、最後は「まだまだだから、一緒に頑張りましょう」という内容で締め括られていた。

 

中には、涙を流している店長もいた。しかし、その涙が何を意味するかは、今となってはもはやわからない。

 

結局、店長と、マネージャーの心の溝は、埋めることができなかった。表面だけをねぎらっても、それは、全く意味のないことだと、私は痛感した。

 

つづく

 

【今日のまとめ】

弊社が「やめない店づくり」をはじめとする、様々なテーマで研修や、仕組みづくりをする際、ベースにしているものが二つあります。

 

ひとつは、「しつもん」です。

本文にあるように、「安心安全な場」をつくり、「しつもん」によって、相手の想いを引き出します。

 

もう一つは、何度も登場していますが、「ねぎらい」です。

「成果の有無に関わらず、無条件で承認し、感謝する」ことの重要性をお伝えしていますが、やはり、「人をねぎらったことのない人」に、「ねぎらい」を伝えていくことの難しさを、毎回痛感しています。

 

この研修以降、必ず、事前に「ねぎらいレター」の内容を確認させていただいていますが、(実は、これ以前は、確認などしなくても、皆さんが素晴らしいお手紙を書いてくださっていたので、私も、そこまで難しいことだと、認識してませんでした)

やはり、いきなり「ねぎらってください」と言っても、これまで、そういう概念のなかった皆様にとっては、難しいのですね。

 

ここで、「ねぎらいレター」の書き方を、お伝えしましょう。

 

  • 相手が、これまで、やってきたことを思い返す

(称賛されてきたことも、むしろそうでなかったことも)

  • 相手が、その時、どんな感情だったかを、想像する

(苦しかった時は、どれほど苦しかったかを、想像してみる)

  • 苦しかった時、相手が、どんな言葉をかけてほしかったか?を想像する

  • 1~3までを頭の中で、巡らせ、順に書いていく

  • 主語は「相手」。「あなたは~~~をしてきました」「さぞかし、あなたは~~~だったでしょう」

  • 懺悔は必要ない

(相手のことを慮ると、つい、何もできていなかった自分が不甲斐なく感じ、途中から懺悔の手紙になってしまうことがあります。《中間管理職の方に多い》相手は、懺悔してほしいのではなく、ねぎらってほしいので、必要以上に懺悔しなくてもよいです)

  • 期待しない

(つい、「もっと頑張りましょう」「あなたの力は、こんなものじゃないです」と期待が高じるあまり、「激励レター」になってしまう場合もあります。しかし、これでは、「今のままではダメです」とダメだしをしているのと同じ。「ねぎらい」は、あくまで、これまでやってきたこと、乗り越えてきたことへのいたわりです。過分な期待は、返ってプレッシャーになります)

 

「ねぎらいレター」は、「激励レター」とも、また「感謝の手紙」とも違います。

 

「~~~してくれて、(私が嬉しかったので)ありがとう」ではなく、

「~~~してくれた、(あなたが)尊い」を伝える手紙です。

 

主語は、あくまで「相手」です。

 

私や、職場のためにやってくれて(私が)「ありがとう」という感謝ではなく、

 

どんな時も、コツコツと尽力している、あなたが素晴らしい

あなたが、きっと、誰よりも大変でした

誰よりも、人知れず、周りのことを考えてくれていたのはあなたでした、、、

 

と、やってきたのは、「あなた」ですよ、「あなた」がいてくれたからこそですよ、とそのまま、伝えること、

これが、「ねぎらい」です。

 

その時、相手は初めて、

「見ててくれてたんだ」

「知っててくれていたんだ」

「自分がやってきたことも、無駄じゃなかったんだ」と、ようやく、自分のしてきたこと、そして、自分の存在そのものを認め、誇りを持つことができるのだと思います。

 

ところで、皆さんは、「ねぎらいレター」を書いたことはありますか?

 

「感謝の手紙」や、例えば送別会の時に渡す「送別のお手紙」はあるかもしれませんね。

もちろん、それも素晴らしいです。もらった相手は、さぞかし、嬉しかったことでしょう。

 

でも、せっかくなので、この機会に、「ねぎらいレター」を書いてみませんか?

 

上記の1~7を意識して、ぜひ、したためてみてください。

 

ポイントは、

 

*渡さなくても大丈夫

⇒実際に相手に渡さなくても、「ねぎらいレター」を書く、という時間そのものが

自分にとっても、相手にとっても「ねぎらい」の時間です。

逆に「相手に渡そう」と思うと、言葉を選んだり、カッコつけたりして、

本当の「ねぎらい」の気持ちが出にくくなってしまいます。

 

*まずは、自分に書いてみよう

⇒まずは、ご自分に向けて、「ねぎらいレター」を書いてみませんか?

これまで、あなたがしてきたこと。その時、感じたこと。苦しく、しんどかったこと。

その時、本当はかけてほしかった言葉。主語はあなた。自分が呼ばれたい名前でぜひ。

自分に優しく語りかけるように。謝らなくていいです、あなたは悪くない。

そして、自分に「まだまだ」とか「もっと頑張れ!」って、言わなくていいです、この時間だけは。

ひたすら、自分がやってきたこと、そして、ご自分の感情に向き合い、

つらかったね。

  しんどかったね。

  本当によく頑張ってきたね……。

と、ただひたすらに、ご自身に、ねぎらいの言葉を綴ってみてください。

 

そうすることで、

「ああ、これが、ねぎらわれる、っていうことなんだ」

「ねぎらわれると、こんなに心があったかくなれるんだ」

ということを、実感できると思うんです、

いえ、そうなって頂けることを、心より、願っています。

 

「ねぎらい」は、まずは自分から。

今日は、このことを知ってもらえたら、これほど嬉しいことはありません――。